欲しいクルマ、彼女にゴーをもらうには?
「毎月の維持費は?」「駐車場代は?」「え、私たち、これから結婚するかもしれないのに?」etc…
欲しいクルマの話を切り出した途端、人生の面接が始まることがあります。しかし、相手が反対しているのは、必ずしもクルマそのものではない。楽しみを優先して、ふたりの将来が後回しになっていないか。今回はその不安にどう向き合うかのお話。
SA MAG.が考えたいのは、彼女を言い負かすための口説き文句ではありません。クルマを買うことが、パートナーとの時間、結婚後の生活、そして家族のあり方にどうつながっていくのか。その話を自分の言葉で伝えられるかが大切です。
ロマンを通すなら、先に現実を語るべし
「好きだから買う」で終わらせるのはさすがに雑。駐車場代、保険、税金、車検、整備費等々、ふたりの生活に関わる買い物なら、まずは現実を伝えましょう。壊れたときに生活費を削って慌てるようでは、どれだけ格好いいクルマでもただの無計画。
だから購入前に一度考えたい。月々いくらまでなら無理なく払えるのか。保険に入り、少しの予備費を残せるのか。リアルな数字と向き合うことを避けたまま、欲しいと言っていても、相手の不安は消えません。
一方で、維持費をイメージだけで怖がる必要もない。毎日使うのではなく、土日に乗る程度であれば、燃費の差がそのまま家計を壊すような額になるとは限らない。走る距離や選ぶ車種にもよりますが、月に数千円の差で、週末のたびに乗りたくなるクルマを選べるなら、それは検討する価値のある出費です。
それに中古車であっても、買った瞬間に価値が半減するわけではありません。状態や相場には左右されるし、どんなクルマにも同じようなリセールバリューがつくわけではない。それでも選び方によっては売却するときに価値が残ることもある。維持費だけでなく、手放すときのことまで考えたうえで、それでも乗りたいと思えるクルマに出会えたなら、あとはもうひと踏ん張り。
結婚前にしか選べないクルマだってある
年齢を重ね、結婚を意識し始めると、買い物の意味は少しずつ変わっていきます。部屋を借りるなら広さや駅からの距離。家具なら長く使えるかどうか。クルマもまた、自分が乗りたいという理由だけでは決めにくくなっていく。
子どもが生まれれば、後席の広さや荷物の積みやすさ、乗り降りのしやすさが大事になる。ファミリーカーとしてミニバンが選ばれるのは、家族の生活にとって正しいからです。ただ、最初の愛車まで家族にとっての正解で選ぶのは、少し早い。
いずれ、クルマを選ぶ基準は、チャイルドシートが載るか、ベビーカーが入るか、家族全員で快適に乗れるかに変わるかもしれません。少し古くても、荷物があまり積めなくても、運転するたびにうれしくなる。そんな理想の愛車を選べるのは、結婚前のいまだけかもしれません。
結婚後の暮らしに、本当に好きなクルマを連れていくのか。それとも、生活が変わるタイミングで手放すのか。その選択肢を持っておくこと自体に、意味があると思います。
家族ができると、クルマの役目は変わる
移動だけを考えるなら、カーシェアやレンタカーは合理的です。必要なときだけ借りれば、駐車場代も保険料もかかりません。都内で暮らしていれば、その選択が合う人も多いでしょう。
それでも、愛車があるから生まれる時間があります。土曜の朝に少し遠い公園へ行く。ボールとレジャーシートを積んで出かけ、帰りにスーパーへ寄る。大きな予定がなくても、それだけで週末は少し楽しくなります。
子どもが生まれれば、ラゲッジにはおもちゃや着替えが積まれ、後席にはチャイルドシートがつく。気づけばクルマは、移動のためだけの箱ではなく、家族の時間を引き受ける場所になっています。
リビングがひとつ増えるようなものと言えば、少し大げさかもしれません。それでも、家の外にありながら記憶が残る場所がひとつ増える。その1台があるだけで、行ける場所だけでなく、家族で過ごせる時間の幅も変わっていきます。
便利な1台が、記憶に残るとは限らない
家族が増えれば、クルマに求める条件も変わります。荷物が積めて、後席が広く、乗り降りもしやすいミニバンは、たしかに頼りになる。家族のために選ぶなら、それが正解になることも多いでしょう。
ただ、便利なクルマへ乗り換えることと、結婚前に選んだ愛車への愛着が消えることは別の話です。少し古く、多少手がかかっても、その1台を手放さずに乗り続ける人もいます。
そこには、ふたりで出かけた頃の時間が残っています。初めて遠出した日、何気なく立ち寄った店、子どもが生まれて後席の見え方が変わったこと。そうした記憶は、乗り換えるべき合理的な理由とは別の場所に積み重なっていきます。
最初はひとりの趣味だったクルマが、いつの間にか家族の予定や会話のなかにいる。便利な1台が、いちばん記憶に残るとは限りません。
だから恋人に伝えるべきなのは、ただ「このクルマが欲しい」という気持ちではない。その1台とどんな時間を過ごし、ふたりの生活をどう変えていきたいのか。そこまで話せたとき、クルマはようやく、ひとりの趣味ではなく、ふたりの未来の選択肢になるのだと思います。
Edit:Kanta Hisajima