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昔のクルマ、小さすぎない? クルマがどんどん大きくなった理由|永井先生の自動車講座

街でクラシックカーを見かけたとき、「写真で見るより小さくない?」と思ったことはありませんか。隣に現代のクルマが並ぶと、車高だけでなく、長さも幅もひと回り違って見えます。

その感覚は、だいたい正解。長くつくられてきた車種の多くは、モデルチェンジを重ねるたびにボディを大きくしてきました。では、なぜクルマは大きくなり続けているのでしょうか。

今回は、トヨタ・カローラとスポーツカーの代表であるポルシェ911を比べながら、その理由を考えます。

初代カローラは、いまの軽自動車とほぼ同じ幅

まずは、1966年に登場した初代カローラ。ボディサイズは全長3,845mm、全幅1,485mmでした。現在の軽自動車の規格が全幅1,480mm以下なので、横幅だけを見ればほとんど同じです。

対する現行の12代目カローラは、全長4,495mm、全幅1,745mm。初代と比べると、全長は650mm、全幅は260mm大きくなりました。横幅は左右に約13cmずつ増えた計算です。いつもの駐車場で考えれば、ドアを開ける余白が両側とも握りこぶし一つ分ほど減る。数字以上に大きな変化でしょう。

初代カローラは、あらゆる性能を一定以上にまとめたうえで、魅力となる要素を加える「80点主義+α」という考え方から生まれました。当時の日本で家族が使いやすく、購入しやすい大衆車を目指した一台です。

つまり、最初から小ささを売りにしたというより、当時の道路や駐車環境、求められる室内空間に合わせた結果が、このサイズでした。街も暮らしもいまとは違う。クルマに背負わせる役割も、まだ現在ほど多くありません。

安全を積み重ねると、ボディは厚くなる

クルマが大きくなった最大の理由のひとつが、安全性能です。

現代のクルマは、衝突したときにボディの前後を計画的に潰して衝撃を吸収しながら、乗員が座る空間はできるだけ変形させないようにつくられています。ただ大きければ安全という単純な話ではありませんが、衝撃を受け止める構造や、強い客室をつくるための空間は必要です。

側面衝突に備えるドア内部の骨格や、太くなったピラー、サイドエアバッグやカーテンエアバッグも加わりました。かつて薄い鉄板と内張りだけに見えたドアが、現代では分厚い壁のようになっているのは、そのためです。カローラも世代を重ねるなかで、衝撃吸収ボディや高強度の骨格、エネルギーを吸収するドア構造を採用してきました。

もちろん、大きくなった理由は安全だけではありません。後席の広さ、荷室容量、静粛性、エアコン、モニター、スピーカー、運転支援用のセンサー。いまのクルマには、昔なら存在しなかった装備がぎっしり詰まっています。見た目のサイズが増えたぶん、クルマの中に入っている仕事も増えました。

さらに、カローラのように世界中で販売される車種は、海外の道路環境や体格、長距離移動、荷物の量まで考えなければなりません。現行カローラの日本仕様は、海外仕様より短く、狭く調整されています。それでも初代より大きい。世界基準のクルマを、日本の道に収まるところまで仕立て直したサイズともいえます。

911は、速さを受け止めるために広がった

大衆車のカローラに対して、ポルシェ911はスポーツカーです。こちらも基本的なシルエットを守りながら、60年以上かけて大きくなりました。

1960年代の初期型は、全長約4,163mm、全幅約1,610mm。現行の911カレラSは、全長4,542mm、全幅1,852mmです。全幅の差は約24cm。初代カローラと現行カローラの差に近い数字になります。

911の場合、サイズアップの大きな理由は性能です。エンジンの出力が上がれば、その力を路面へ伝えるために太いタイヤが欲しくなる。速度が上がれば、強力なブレーキや高いボディ剛性も必要です。安定性を高めるために左右のタイヤの間隔を広げ、長くなったホイールベースで高速走行時の落ち着きも確保する。速く走る能力だけでなく、その速さを安全に受け止めるためのサイズアップです。

実際に911は、世代を重ねながらトレッドやホイールベースを拡大し、より太いタイヤや複雑なシャシー制御を採用してきました。一方で、アルミニウムなどを使って重量を抑える努力も続けています。大きくするだけではなく、大きくなったボディをどう軽く、どう俊敏に動かすか。そこにも技術が使われているのです。

クルマが大きくなったのは、単なる流行でも、メーカーの気まぐれでもありません。安全性、快適性、走行性能、そして世界中で使える実用性。求められるものを一台へ積み重ねた結果、ボディの輪郭が外側へ押し広げられてきました。

その代わり、昔のクルマが持っていた取り回しのよさや、細い道へ迷わず入っていける気軽さは薄れています。古いクルマを見て小さいと感じるのは、サイズの差だけではないのかもしれません。人と機械の間にあるものが少なく、クルマがいまより身軽だった時代。その姿を、私たちは小さなボディから感じ取っているのでしょう。

Photo:Tomoro Nakasuji/Instagram@tomoro
Edit:Kanta Hisajima