ヤングタイマーだけじゃない。いま狙うなら2000年代スポーツカー?
クルマの未来を信じて、技術をあれこれ詰め込んだ2000年代。電子制御や電動装備、新しい機構が増え、クルマが一気に高性能になった時代です。
そこから20年以上。かつての最先端技術は、いまでは古く、複雑で、手がかかる。それでも、未来を形にしようとした試行錯誤の熱量が、クルマのつくりそのものに色濃く残っている。その姿になぜだか惹かれてしまいます。
そんなクルマたちを「Technologic Legacy(テクノロジック・レガシー)」、略して「テクレガ」と定義しました。
まだ名前のない2000年代の名車たち
80〜90年代のクルマを指す言葉として、「ヤングタイマー」はすっかり定着しました。年式だけでなく、その時代に生まれたデザインや技術、カルチャーまで含めてクルマを見る。名前が新しい価値をつくったとも言えます。
その一方で、2000年代前後のクルマはいまだ評価の途中にあります。旧車と呼ぶには新しく、現行車ほど洗練されてはいない。中古車市場では、単に少し古いクルマとして扱われているモデルも少なくありません。
しかし、この時代には明確な特徴があります。
911は996型から、空冷エンジンから水冷エンジンへ移行し、高級車には電子制御や電動装備が次々と採用された。速さ、快適さ、安全性を求めて、各メーカーが新しい技術を積極的に投入し、現代につながるクルマのかたちを模索していた時代です。

その試行錯誤は、20年以上経ったいまもクルマのつくりに残っています。SA MAG.では、そこに価値を見出したい。
当時の先進技術が時代性を帯び、ひとつの魅力として見えるようになったクルマ。それがテクレガなのです。
当時の「未来」が、いまかっこいい
Technologic Legacyの魅力は、単に古いことではない。2000年代前後のクルマには、各メーカーが思い描いた“次の時代”が、そのまま形になって残っています。

初代アウディTTは、テクレガを象徴する一台です。円を基調としたシンプルなフォルムは、1998年の登場から20年以上が経ったいま見ても、古さより先に強い個性を感じさせます。当時のアウディがこれからのデザインを示すためにつくった一台であり、その思想は外観だけでなく内装にも徹底されています。

ゴルフ4とプラットフォームを共有しながら、室内に使われるシルバーのパーツにはTT専用のアルミ削り出しを採用。見た目だけを未来的にするのではなく、一台のプロダクトとして細部まで世界観をつくり込んでいる。その完成度の高さに、当時のアウディの本気が表れています。
そしてR230型メルセデス・ベンツ SL500も、この時代をよく表しています。V8エンジンに電動ハードトップ、ウッドパネルに囲まれた室内には数多くのスイッチが並ぶ。当時の高級車に求められた性能や快適性を、惜しみなく盛り込んだ一台です。

発売当時は先進的だった装備も、いま見れば古さを感じる部分がある。複雑な機構ゆえに、維持するには手がかかることもあります。ただ、その古さや複雑さは、いまや単なる弱点ではありません。
どんな技術を未来だと考え、どこにコストをかけ、どう次の時代へ進もうとしたのか。その答えがクルマごとに違うからこそ、2000年代のモデルにはメーカーの思想が濃く残っています。完成された現在から振り返ることで、当時は見えなかった個性が浮かび上がる。
Technologic Legacyとは、そうした“かつての未来”に価値を見出すための視点でもあります。

評価が定まっていないから面白い
2000年代前後のスポーツカーには、つくられたモノとしての価値が、まだ中古車価格に反映されきっていないモデルが多くあります。
クルマの価格を決めるのは、性能や品質だけではありません。人気や希少性、時代による評価がプレミアムとして加わります。すでに価値が定着したヤングタイマーが価格を上げる一方で、当時高価だったモデルや、いまでは考えにくいほどコストをかけた一台が、2000年代前後にはまだ現実的な価格で残っています。
もちろん、値上がりを期待して買おうという話ではありません。評価が固まりきっていないからこそ、そのクルマが何を未来と考え、どんな技術やデザインに答えを出したのかを、自分の目で確かめられる。
すでに正解になったクルマを追うのではなく、まだ名前のない価値を見つける。そんな大人が増えれば、クルマの未来はもっと面白くなるはず。

Photo:Tomoro Nakasuji/Instagram@tomoro
Edit:Kanta Hisajima